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東京高等裁判所 平成11年(行コ)148号 判決

主文

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人に対して平成六年三月二五日付けでした労働者災害補償保険法による休業補償給付支給決定及び同年五月二七日付けでした同法による障害補償一時金給付支給決定をいずれも取り消す。

三  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  控訴人

主文と同旨

二  被控訴人

1  本件控訴を棄却する。

2  控訴費用は、控訴人の負担とする。

第二事案の概要

事案の概要は、次のとおり訂正し、又は付加するほかは、原判決の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

一  原判決五頁六行目の「希望する」から同行目から同七行目にかけての「提供しており」までを「賃金に関する労働協約を締結しておらず、その給与規程(甲第一八号証)二条において、給与は、基本給、諸手当及び割増給からなるものとし、諸手当の中に家族手当、皆勤手当、住宅手当等と並んで給食手当を掲げているが、給食手当として現金が支給されることはなく、控訴人を含む希望する従業員に対して昼食(以下「本件給食」という。)を現物支給しており(ただし、事実上ほぼ全従業員に対して一律恒常的に提供されている。)」と改め、同行目の「賄費」の次に「。以下「本件給食費」という。」を、同九行目末尾の次に「しかし、本件給食の提供を受けない従業員に対して、これに代わるものとして本件給食費相当額を現金等で支給した例はない(甲第一二、第一八号証、乙第九号証、弁論の全趣旨)。」をそれぞれ加え、同一〇行目の「同年三月二三日」を「平成六年三月二五日」と改める。

二  原判決六頁四行目の「二四日」を「二七日」と改め、同七行目の「二六八万八七〇六円」の次に「、特別支給金額三九万円及び特別一時金額五三万七八六二円(以下「本件障害補償一時金」という。)」を加え、同八行目の「という」を「といい、本件休業補償給付支給決定と合わせて「本件各処分」という」と改め、同九行目の次に行を改めて

「(三) 被控訴人は、本件各処分において、各給付額算定の基礎となる控訴人の平均賃金の算定に当たり、その期間を雇入れの日である平成五年六月二二日から、本件負傷の直前の賃金締切日である、月給部分については同年八月一五日まで、日給部分については同月三一日までとし、また、本件給食費を賃金に算入しなかった。」

を加え、同一〇行目の「同年」を「平成六年」と改める。

三  原判決七頁八行目の「右審査会は」の次に「、右後者の却下決定を不当とし、右各審査請求についていずれも本案の審理を行った上」を加える。

四  原判決八頁二行目の「1 」の次に「平均賃金の算定に関し、」を加え、同四行目及び同五行目を

「2 本件給食費六〇〇円の三分の一に当たる二〇〇円と従業員負担分一〇〇円との差額一〇〇円、その一か月三〇日として合計三〇〇〇円は、労働基準法一一条に規定する賃金に当たり、同法一二条の平均賃金算定の基礎とすべきか。」

と改める。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証日録に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  当裁判所は、控訴人の本件請求は理由があるから認容すべきものと判断する。その理由は、次のとおり訂正し、又は付加するほかは、原判決の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これをここに引用する。

1  原判決八頁八行目の「本件において」を「労働者災害補償保険法の適用上」と、同一〇行目の「である」を「とするとされている」とそれぞれ改める。

2  原判決九頁五行目の「となる」から同一一頁七行目末尾までを「となるが、他方、本件会社は賃金締切日を設けているので、このように雇入後三か月に満たないため平均賃金の算定につき右規定が適用される場合には、同条二項の適用が排除され、雇入後の全期間を算定期間として平均賃金を算定すべきか、それとも、このような場合においても、右規定が適用され、雇入後から平均賃金を算定すべき事由発生直前の賃金締切日までの期間を算定期間として平均賃金を算定すべきかについて、検討する。

2  同条一項は、平均賃金について、「この法律で平均賃金とは、これを算定すべき事由の発生した日以前三箇月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。」と定めている。この平均賃金は、同法上解雇予告手当(同法二〇条)、使用者の責任に基づく休業手当(同法二六条)、年次有給休暇の賃金(同法三九条)、業務上の災害補償(同法七六条ないし八二条)、減給の制裁の場合の制裁額(同法九一条)等を算定する場合の基準となるものであるが、このように、右各基準となるものとして同法一二条一項において平均賃金を定めた趣旨は、右いずれの場合にあっても、賃金は、その性格上、企業収益を反映し、また、労働日数の多寡等に応じて高下するものであることにかんがみ、できる限り妥当な平均値を基準とすることが相当であるとし、この場合、一方において、労働の全期間を対象としてこれを求めるときの煩雑さ、他方において、ごく短期間を対象としてこれを算定するときの算定時期の異なるごとに生ずる著しい不均衡を避けるため、いずれの場合にも妥当する公平な平均値を算定する期間として、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前三か月の期間を算定期間とすることが相当であるとしたものと解される。したがって、右一二条一項が平均賃金の算定期間として三か月を原則的な期間としていることは、明らかである。

3  ところで、同条二項は、「前項の期間は、賃金締切日がある場合においては、直前の賃金締切日から起算する。」と規定している。これは、賃金締切日が設けられている場合において、賃金締切日前に平均賃金を算定すべき事由が発生したときも、同条一項により右事由発生の日以前三か月の期間を算定期間として平均賃金を算定すべきものとすると、賃金の再計算等事務の煩雑を招くおそれがあることから、計算の便宜のための簡便な方法として、平均賃金の算定期間を三か月とした同条一項の原則は崩さず、その起算日のみを算定事由発生の日でなく賃金締切日に変更することとしたにすぎないものである。したがって、同条二項は、賃金締切日がある場合の平均賃金の算定期間の起算日の変更について定めた規定であって、平均賃金の算定期間そのものを変更することまでを予定したものではないと解するのが相当である。

4  ところが、同条六項は、「雇入後三箇月に満たない者については、第一項の期間は、雇入後の期間とする。」と規定している。これは、雇入後三か月に満たない間に平均賃金を算定すべき事由が発生した場合には、三か月の期間を確保することができないため、やむを得ず、同条一項の例外として、雇入後から右算定事由が発生した日までの全期間を算定期間として平均賃金を算定することとしたものということができる。

そこで、同条六項が適用される場合にも、同条二項が適用され、雇入後から平均賃金を算定すべき事由発生直前の賃金締切日までの期間を算定期間として平均賃金を算定することになるのか、それとも、この場合には、同項の適用はなく、雇入後から右算定事由が発生した日までの全期間を算定期間として平均賃金を算定するのかであるが、当裁判所は、同項の適用はなく、雇入後から右算定事由が発生した日までの全期間を算定期間として平均賃金を算定すべきものと解する。けだし、同条六項の場合にも同条二項が適用されると解するとすると、同条六項の場合にはそもそも右算定期間が同条一項が定める原則的な三か月の期間に満たないのに、これよりも更に短い期間を平均賃金の算定期間とすることになるが、このように解することは、平均賃金の算定期間を三か月と定めた同条一項の趣旨に沿わないのみならず、同条二項は、前記のとおり、賃金締切日がある場合に計算の便宜上平均賃金の算定期間の起算日を賃金締切日に変更することを定めたにすぎないものであり、それ自体は、算定期間に変動を及ぼすことを予定した規定とは解されないのに、右算定期間を短縮する効力を認めることになり、右規定の趣旨にも反するものと解されるからである。」と改める。

3  原判決一一頁八行目の「3 よって、」を「5 よって、被控訴人が本件各処分において」と改め、同九行目の「当たり」の次に「、雇入れの日である平成五年六月二二日から本件負傷の日である同年九月一四日までの全期間を平均賃金を算定するための期間とすることなく」を加える。

4  原判決一二頁三行目の「違法」から同一四頁六行目末尾までを「違法というべきであり、本件各処分は、その余の点につき判断するまでもなく、取消しを免れない。」と改める。

二  よって、当裁判所の右判断と異なる原判決は不当であるから、これを取り消し、控訴人の本件請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石井健吾 裁判官 櫻井登美雄 裁判官 加藤謙一)

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